長持ちの秘訣
DATE 2010.08.07
先日旅行で宿泊した旅館は福島県の「向瀧」さん。登録有形文化財第一号の建物を有する老舗中の老舗です。元々会津藩の保養所として使用されていたため、建物のクオリティが非常に高いのがポイントです。ハウスメーカーが100年住宅などと掲げ、堂々と建て売り住宅を販売していますが、ああいう感覚が私には理解出来ません。家を100年維持する事が如何に大変な事か解ってるのかどうか。単に個々の部材がスペック上で100年以上の耐久性があるとかどうとかいう話でしか無いのでしょうが、それにしても安直なキャッチコピーだと思います。例えば「向瀧」さんの建具の状態なんか見ますと、あり得ない位に歪みが無いんです。最高の材料と最高の職人がこしらえた建具は、今なお滑らかに動きます。レールも綺麗なもんです。物には何でも寿命がありますが、その寿命を決めているのがコストだったります。個人的に昔の木造の建物を取り壊すのは大反対ですが、昔の大工が目論んだ寿命を遙かに超えての維持になる場合、良く考えないといけません。
モノには寿命があり、それを一番良くしってるのはそれを設計している人物。耐用年数も、耐久性も、仕様を決めるとある程度自動的に決まってしまいます。床材一つとっても、合板の床よりも無垢の床の方が長持ちします。無垢の床でも、杉と楢では耐久性が違います。「向瀧」さんで感心した所は、極力昔と同じ材料を使っている所です。これがかなり勇気が必要な事で、普通の大工さんだと簡単に代用品に替えてしまいます。理由は安くて簡単に施工出来るからです。ところが失っているモノがある事に皆さん気がつきません。そう、大切な風合いや風情はことごとく捨て去っている訳です。「向瀧」さんの古さを際だたせているのはこういう配慮の積み重ねだと思います。あっちにこれが足りない、こっちにあれが足りない。それを何も考えずに改修すると・・・とんでもない結果に。パッチワークみたいな建物になってしまいます。福島の老舗旅館へ宿泊し、古い物を大切に使う姿勢にいたく感心してきました。見習うことの多い旅館で大変勉強になりました。