カズオ・イシグロの原作の映画版で、小説はブッカー賞を受賞しています。主演はアンソニー・ホプキンス演じるスティーブンス。ある主人に仕える執事の物語ですが、エマ・トンプソン演じる女執事との淡く深い恋愛も描かれ、本当に見応えのある内容になっています。私の知る限り、最高の執事はこの映画のスティーブンスだと思います。ある晩餐会の最中にスティーブンスの実父が倒れますが、その際も仕事を最優先します。表情を変えず、ただただ執事としての仕事を全うする事を一番に考えるスティーブンス。感情を表に出さない執事という仕事が実に良く描かれています。映画全般を通して、貴族社会でありながらある種の慎ましさを感じます。イギリスの靴や車、服に関しても同様に、全体に控えめで大人しいものが多く、本質を表に出さない傾向があります。この映画を見た後、何故かイギリス車でドライブに行きたくなりました。イギリス車の乗り味や雰囲気はまさに「日の名残り」の世界観と重なります。良い映画です。