現在フランク・ロイド・ライト展が豊田市美術館で開催されています。ライトは近代建築の流れを大きく変えた建築家ですが、その流れを鳥瞰出来る展覧会です。ライトの建築家としてのキャリアはアドラー＆サリヴァンの事務所からスタートしました。ルイス・サリヴァンはシカゴの建築界を代表する建築家。もちろん未だニューヨークのない時代のことです。

シカゴ万博で日本のパビリオンである鳳凰殿と出会ったことがその後の人生を変えます。その流れが結局旧帝国ホテルにつながってくるのですが、ライトの人生は浮き沈みの連続。私生活の問題で一度はアメリカで設計活動が困難になり、ヨーロッパへ渡ることになりましたが、そこでライトはドイツのヴァスムート社から作品集を出版します。これが当時の建築界に衝撃を与えたのですが、私生活の問題が無ければその後の建築界の流れも変わっていたかもしれません。人生は紙一重なんだとつくづく思います。

そんなライト展の会場である豊田市美術館は谷口吉生設計。こういう緻密で整然とした空間を見ていると緊張感が漂ってきます。無駄なものが何もない上、全ての要素が調和しています。何度来ても感激する素晴らしい設計だと思います。

豊田市美術館のシンプルな設計は、茶室のシンプルさと通ずるものがあります。数寄屋建築の世界観と重なるところが至るところにみえてきます。建物の修繕跡がちらほら見えますが、設計上チリや逃げが最小限の納まりが基本となっているので対策は大変かと思います。このコンディションを長く保ってほしいものです。