秋刀魚の味
DATE 2012.03.31
1962年に制作された小津安二郎監督の遺作です。この映画の完成から、ちょうど今年で半世紀が経ちます。セリフは棒読みに近く、現代の映画とのギャップはかなりのものですが、人間の心理描写やカメラの構図は本当に独特。俳優さんは必要以上に個性を出さない、押し殺したような演技をしています。「秋刀魚の味」では笠智衆と岩下志麻の親子が話の中心で、完璧な父親である笠智衆が、娘の結婚で揺れ動く姿を淡々と表現します。はっきり言って何て事の無い内容ですが、当時の生活スタイルや価値観が良く表現されていて、本当に面白いと思います。映画に出てくる家などは、生活感を出し過ぎないような配慮が至る所に感じられます。ゴミ箱一つとっても綺麗に描かれている。こういうクォリティの映画が本当に少なくなりました。「東京物語」も良いですが、「秋刀魚の味」も良いです。そういえば「秋刀魚の味」は日本人にしか解らない表現かも知れません。秋刀魚のほろ苦さを人生とひっかけたようですが、英語で伝えるのは難しそう。