和泉石材店

BLOG 「一言石句」

オーガニック

DATE 2009.04.07

kai.jpgいよいよ潮干狩りのシーズンがやってきました。皆さんも一度自分で採った貝を良く眺めてみて下さい。きっとその模様の美しさに驚くと思います。貝殻には、北欧、アフリカ、英国、日本、様々な民族模様を連想させる柄があります。貝にはデザインしているという特別な意志はもちろん無い訳ですが、このような芸術的とも言える模様を生み出しています。

hon.jpg今からちょうど50年前、近代建築を代表する世界的な建築家が世を去りました。その建築家の名はフランク・ロイド・ライト。明治村にある旧帝国ホテルの設計者として日本でも有名な建築家です。彼の作品は、自然界にあるデザインの美しさにインスピレーションを得た作品が多く、オーガニック・アーキテクチャー(有機的建築)と呼ばれました。ライトの晩年の代表作であるグッゲンハイム美術館は巻き貝のような外観が特徴で、内部には螺旋スロープが設けられ、構造的にもまさに巻き貝のような形をしています。当時の時代背景を踏まえるとかなり前衛的な建築であったと想像でき、実現までに相当の歳月を費やしています。

chashitu.jpgそんなライトが最も影響を受けたのが日本の建築です。その簡素な建物は周囲の環境に溶け込み、古来より「オーガニック」な思想が受け継がれてきました。ライトの生涯を代表する作品「落水荘」は、そんな日本の建築の考え方を踏襲する、自然の一部となった傑作です。細い柱に低い庇、土の壁や紙の貼られた建具、西洋の価値観とは全く違う世界が日本の建物にはあります。
街中で「オーガニック」の文字を良く見かけます。そのほとんどが食に関係するものばかりです。しかし、デザインの世界でオーガニックを唱える建築家が50年以上前にいた訳です。我々日本人は、古くからオーガニックな文化を持っています。それは衣食住の全てにわたって影響を与え、日本特有の美しさを生み出してきました。ライトは日本の浮世絵を好んで買い求めました。絵としての浮世絵の素晴らしさと、そこに切り取られた江戸時代の日本の文化や風習がライトの心を掴んだのでしょう。デザインには表層の部分と、文化や風習まで踏み込んで考える部分があります。時間と共に輝きの増す優れたデザインには、文化や風習をきちんと解析した痕跡があります。なかなか難しい課題ですが、当社も地道にオーガニックデザインに取り組んで行きたいと思っています。