和泉石材店

BLOG 「一言石句」

無縫塔工事完成

DATE 2023.08.12

右は宇寿石の錆び。左は宇寿石の割り肌面。赤と青。対照的な表情ですが同じ石です。これを無縫塔の敷石の中で使い分けてあります。多分違う石と思われるでしょう。これくらい石の表現の幅はあるのです。

こちらはセリ矢跡。石の割り方はセリ矢とマメ矢の大きく2種類あります。どちらが良いとか悪いとか言うわけではありません。石の性質や意匠性を加味して割り方を決めていますが、1つだけ決定的な違いがあります。それは道具としての時代です。セリ矢は圧倒的に新しいのです。それ以前はマメ矢で石を割っていまして、その跡は全く違います。

今回はお墓の右と左で石の割り方が違うように配置しました。要するに右の方が古い道具で割った石になっているのです。道具の時代背景を意匠的に使ってあります。石貼りというには凸凹だらけで目地も不規則。余りに荒っぽい仕上ですが、これを几帳面に設置しているとコストに反映し過ぎてしまいます。そこで谷性寺さんに承諾を得て、極力加工を少なくし、石の素材感を残した仕上にするようにしました。

墓誌のこんな状態です。セリ矢のあとはそのままm残された花沢石は圧倒的に個性的。石の顔つきが良かったので我が家の庭に保管されていたのです。今回本当に良い場所に納まったと思っています。字彫り屋さん大変だったと思いますが・・・。

無縫塔の正面文字には通常額縁と呼ばれる装飾が入りますが、一切省きました。ただし、彫る文字を書家に用意していただき、書の風合いを最大限引き出しました。繊細な小叩き仕上にマッチした書だと思います。石工の自由を許していただいた谷性寺さんの感謝致します。そしてややこしい注文に果敢に挑戦していただいた石工皆様ありがとうございました。百年先に良いメッセージを残せたと自負しております。