設計者とは
DATE 2010.07.06
イギリスにスペン・キングというエンジニアがいました。素晴らしいセンスの持ち主で、代表作はレンジローバーやローバー3500といった車があります。レンジローバー生誕40周年の今年、スペン・キングは帰らぬ人となりました。非常にセンスのあるエンジニアで、今で言うコンセプトメイキングが上手い人でした。そして何よりも「良心」のある人で、スペン・キングの設計した車には至る所に設計者の良心が潜んでいました。残念ながら現代の車において、そういう設計者やデザイナーの良心を感じる場所が、どんどん排除されている気がしてなりません。お客さんの意見を取り入れ・・・なんてやり取りが日夜繰り返されるのです。お客さんの意見は大切なんですが、その中には人間のエゴなんかも入り交じっている訳です。そこら辺をよく汲み取った上で提案をしないといけません。そこで試されるのが人としての「良心」です。
住宅の設計なんかですと、クライアントがプランを設計者に渡すケースがあります。こんな感じにして欲しいと。こういうのは全くのナンセンスで、クライアントは自分の住みたい家の事は解っていません。理想の家と思っているのは、自分の少ない建築観からひねり出したささやかな願望に過ぎません。それをそのまま鵜呑みにして設計し、出来上がった家はすぐ解ります。設計者の資質にもよりますが、24時間建築の事ばかり考え、悩み抜いている人間に素人が考えたプランがかなう訳がありません。任せるべきは「良心」を持った人間。そういう設計者の意見をもっと大切にしないと。売れないといけないデフレの時代、お客様第一主義も行き過ぎると逆効果になりかねません。自分も買い物は人を見て買うことを第一にしています。数字に拘りすぎは本当に危険ですよ。
写真はスペン・キングの代表作レンジローバー。この車のプロポーションは他には無い独特のものです。合理的に機能をまとめ上げた結果がこういう形になったのでしょうが、それこそがこの車の美しさの根源にちがいありません。彼の死を知って心底落胆しました。それと同時に、誠実な自動車デザインはもう無くなったと確信しました。