書体
DATE 2017.07.16
公共墓地へ行くとありとあらゆる字彫りが見られます。○○家之墓、先祖代々之墓、先祖累代之墓、南無阿弥陀仏、南無釈迦牟尼仏、南無妙法蓮華経、倶会一処などなど。気に入った文字を自由に彫る方もいます。問題はこの自由である事なんです。自由な選択には間違いも含まれます。先日あるお墓に江戸文字(勘亭流みたいな書体)で堂々と彫られていました。勘亭流という書体はどういう経緯で生まれ、何を表現しているのか。そこら辺を施主さんは知らなかったのでしょう。でもそれは仕方無しとします。石屋がきちんと説明すれば良いのです。がしかし、このお墓の場合、そのまま石屋が彫ってしまいました。そもそも江戸文字というのは芝居などの看板等に用いられた書体で、満席になるように太い書体になっています。お墓にその書体で彫るというのはどういう事か・・。そこまで大入りのお墓にしたいという意思があったかどうか。そこまで深く考えていたらそもそも選ぶわけの無い書体ですから、ファッション感覚だったのでしょう。先日私たちが建てたお墓は宋朝体で彫りました。宋朝体というのは中国で木版印刷が始まった頃出てきた書体です。印刷物の版と言うことは、誰が彫っても一定の形状になるような書体が必要とされ、それが宋朝体という控え目な書体となりました。凹凸は全く逆になりますが、元々版に彫っていたので、石に彫っても違和感がありません。ただしお墓に彫る場合、書体が細いのでそのフォントサイズや仕上方法に一工夫必要となります。普段は文字に塗装はしませんが、今回はうっすら入れています。職人さんにお願いするとその加減が調整出来ないため、私が自分で作業しました。仕上がりは写真の通り。繊細なお墓でしたので繊細で控えめな書体に。良い書体でご提案出来たと思っています。皆さんも書体の選定は慎重に。