浮世絵
DATE 2010.08.12
旅先で見つけた一品です。新潟の赤倉観光ホテルで売られていた手ぬぐいで、デザインを手がけたのは繁岡ケンイチさん。元々フランク・ロイド・ライトの下で働いていたり、レーモンドの下で働いたり、かなり面白いキャリアの持ち主なんです。主にグラフィック、インテリアを担当されており、川奈ホテルなんかも手がけています。川奈ホテルには最後まで勤める事になったようで、他にも多くの舞台設計やグラフィックを手がけています。私が惹かれたのはこの絵の構図。こういう大胆な構図や省略具合は浮世絵に通じる何かを感じます。ライトが世界的な浮世絵コレクターだった影響もあるでしょうが、帝国ホテルの支配人、林愛作から現代の東海道五十三次というコンセプトの壁画の依頼を受ていたようです。結局広重と同様に、日本中をスケッチしまくる事になり、その影響がかなり作品に現れています。この絵の構図、私が最も好きな浮世絵の一枚である広重の亀山を連想させます。余白の取り方、主役の位置など、実に日本的。何だかもの凄く粋な気がします。そういえばライトの描いたパースは浮世絵の影響をはっきり感じさせるものでした。
ライトの浮世絵好きはこんな書籍になっています。学生時代に買った本ですが、インターネットの無い時代に買ったのでかなり入手に難儀しました。合計300ページにのぼる豪華本です。浮世絵はあちらでは「Surimono」と呼ばれているようですが、何だかちょっと意味が変わってしまう気がします。浮世を絵にした所に意味がある訳で、版画というくくりはどうなんでしょうか。筆で書かれた浮世絵も存在する訳で、ちょっと微妙ですね。内容はなかなか見応えのある内容です。浮世絵がライトの建築観にかなり影響を与えたのは間違いないでしょう。ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、・フランク・ロイド・ライト、この3人が近代建築の3大巨匠と呼ばれていますが、ライトだけがちょっと世代が離れています。昨年没後50周年だったライト。世界の建築界の流れはコルビュジェ、ミースの方向へ流れています。しかしライトの目指したオーガニック(有機的)な考え方はもう少し見直されても良いと思います。その根本に日本の影響があるのであればなおさらです。