スパニッシュチェア
DATE 2010.04.07
名作家具のデザイナーの中でもボーエ・モーエンセンは個人的に大変尊敬しています。彼のデザインした家具からはデザイナーの誠実さが滲み出ているような感覚すら覚えます。そんなモーエンセンの作品の中でも格別な椅子がスパニッシュチェアです。以前のブログにも話題を取り上げたのですが、引っ越し中にカタログが出てきたので見入ってしまいました。カタログの表紙はそのアーム部分が写っています。私はこのアームこそがスパニッシュチェアの最も繊細な所だと思います。アームの裏側に僅かながらテーパーがとってあり、座った人はその部分に手をかけるはずです。一見男っぽい椅子なんですがこのテーパーのお陰でアームのタッチが実に優しい感覚になるんです。自分の家にこの椅子が来てから気がついたんですが、こういう事が出来るのがモーエンセンの凄いところ。脱帽です。
で、これがデザインの元になったスペインの椅子です。スペインの中でもイスラム文化の影響を受けている地域にある、ちょっと変わったプロポーションを持つ椅子たち。モーエンセンはこれをリ・デザインしたのです。このカタログも秀作で、ジャズの名盤「Kind of Blue」を引き合いに解説がなされています。個人的に所有している家具のカタログの中でも最も中身のあるカタログです。単に格好いいとか、美しいとかいう表層の話でなく、その考え方やデザイナーの人生観をも伝える傑作だと思います。自分たちの作るカタログもこの領域にまで発展させたいと思っています。頑張ります!